ダイヤル部分にガムテープで固定した高齢の父

実家の仏間の押入れにダイヤル式の金庫があります。もう30年以上前からあったと記憶しています。金庫を扱うのはもっぱら父で、開ける風景をかすかに覚えています。勿論私は開けたこともなく、結婚してからも押入れを開け閉めする時に目に入るだけで、ここに貴重な物が入っているんだなと漠然思うだけでした。 そのうち両親も高齢になり、いつの間にかダイヤル部分にはガムテープが貼られており、ダイヤルが回らないようにしてあり、鍵を回すだけで簡単に開けるようになっていました。高齢ゆえ手間を考えると無理ないなとと思ってはいましたが、そんな時、父が85歳で亡くなりました。7年前の事です。母は認知症が進んでおり、父が亡くなった後の手続きは弟夫婦に任せて、私は葬式が終わり次第家に戻りました。数日後、手続き完了の知らせと共に、金庫騒動の一件を電話で話してくれました。開けようとした拍子にテープがはがれそうになり、そのはずみでダイヤルが回ってしまったそうです。鍵はあるものの、肝心なダイヤルの暗証番号が分からず、直ぐに業者に電話して開けてもらい解決したそうです。結構高かったと聞かされました。金庫には保証書もダイヤル番号もメモもありましたが、ダイヤル番号を何度も合わせるのは手間もかかり、結局弟も父と同じようにガムテープで固定したと言っていました。間もなくして母も施設に入り実家は空家となりました。たまに風通しや掃除で帰るぐらいで、金庫には母宛の郵便物や写真が入っています。後で分かったことですが、掃除している時、押入れの下の段の天井部分に父が書いたダイヤル番号の数字が並んでいるのを見つけました。父の字が妙に懐かしかったです。ダイヤル式でなく、タッチパネルだったら簡単だったのかなとふと思いました。

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